モザペディア 〜青年海外協力隊でモザンビークへ〜

〜28年度1次隊員の7年目理学療法士がゆく。新たな挑戦。希望を求めて。

活動???日目 〜モザンビークの義肢装具士養成コースに侵入してみた〜

 

はい、久しぶりすぎるブログ更新であります。

大丈夫です。ちゃんと活動していますよ!(◎_◎;)

 

ってなわけでここ南アフリカ大陸に位置するモザンビークから今日も久長がレポーター?レポートしていきますよ!!

 

 

さて、今日のテーマは

モザンビーク義肢装具士養成コースに侵入してみた」

そこで感じたことを書いてみたのでどうぞ。

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 ↑実際に義肢装具士育成コースに置かれている道具達。

目次

 

 

 

 

 

 

 

 

(1)ある寒い日の朝

タイトル通り義肢装具養成コースに侵入できたのはある女性からの誘いからだった。。。

「今日は授業ないし、明日の授業と実習の準備でもしようかなぁ」

と思いつつ事務所に入ったある寒い日の朝7時頃。

そして、ある女性から声をかけられた。

 

こんな感じだ

 

職員室にて  

 Chirinza:Bom dia RYOTA.Como está?

(おはよう、RYOTA。調子はどう?)

俺:Mais ou menos.O tempo de hoje está um pouco nublado.Sinto frio.

       Você também sente fria,não ê?

(まぁまぁってところかな。今日の天気少し曇ってるし寒いなぁ。ねぇ、寒くない?)

Chirinza:Acho que não.Hoje não está fria.Posso esquentar você?Hahahaha

(うーん。そうは思わないかなぁ。今日はそんない寒くないわよ。私が温めてあげようか?笑笑笑笑)

 

 

 

 

俺:。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。É paa!

 (えっっ!◎_◎;)。

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Chirinza:Hahahaha.Esta é brincadeira.A propósito hoje têm alguns programas ?

 (wwww。冗談よ、冗談。ところで、今日は何か予定ある?)

俺:Você sempre dizeres uma brincadeira.Hoje?Hoje não tenho nada.

 (いつも、君は冗談言ってるじゃないか。今日?今日は特にないけど。)

Chirinza:Ê verdade?Não disz sempre.Hahahaha.

                 Se tiver um tempo,me ajuda aluguma coisa?

 (え、本当?いつもじゃないわよー。wwww。もし、時間があったら今日、ちょっと

  ある仕事を手伝ってくれない?)

俺:Em absoluto,não quero ir à cama contigo.

 (絶対、君と一緒にベッドには行きたくからね。)

Chirinza:hahahaha.Vamos para lá com junto.

 (wwww。一緒にあるところに行くわよ!)

俺:Tenho medo........

 (怖いわ。)

 

っといつもこんな風に冗談を言い合うのがモザンビークの文化?なのである。

いつのこの冗談にすぐ反応出来るように定型フレーズをいくつか用意しているのが常である。が、未だかつてこの冗談に上手に反応できたことは少ない。

まぁ。日本にいた時から笑いのセンスは無かったけれども...

 

 

 (2)義肢装具士(ぎしそうぐし)って何する人なん?

そもそも義肢装具士とはどういう職種なのか?を説明しておく。 

医療従事者であれば同じ医療チームの一員なのでピンっとくると思うが、医療従事者じゃない人にとっては、なにしとるんじゃ?と思うかもしれないので少し説明したいと思う(ググれカスって言いたいところですがそこは言いませんよ)。

 

 

義肢装具士とは

医師の処方の下に、義肢及び装具の装着部位の採寸採型、製作及び身体への適合を行うことを業とする者をいう。

出典:義肢装具士 - Wikipedia

 

なんらかの事故で手足を切断してしまった人に対して「義肢」と言われる道具を用いて元の日常生活(歩行、家事、職場復帰など)に復帰してもらうにようにサポートする人達のこと。

そして、今回はフォーカスしませんが「装具」という道具も用いることで、元の日常生活に復帰するための援助も行なっている。

 

  

義肢:四肢を切断した際に手足の役割を補ってくれる道具。

装具:脳梗塞の後遺症で身体になんらかの障害が起きた際に手助けする道具。

 

切断に至る原因は?

様々な要因が絡んでいるが日本における主な原因は以下の3つが一般的だと言われている。

 ①末梢循環障害(糖尿病の経過が進行し、血行が悪くなってしまった状態)

 ②悪性腫瘍(ガンによって危険な状態に陥った状態)

 ③外傷(電車、車など公共交通機関との接触による物理的要因)

 

 

 ん?モザンビークではどうかって?

ここモザンビークにおける主な原因も日本と同じだが少し環境が違う。

 

外傷:一般市民の多くはシャパという乗合バスで移動をしている。そして、そのバスも決して安全運転ではなく「いつ・どこ」で人身事故が起こるか分からない状況である。だって、タイヤとか直ぐパンクするしカーブする時のバスの傾き角度が半端ない。横転するんじゃねーか的な。汗

 

末梢循環障害・悪性腫瘍:肥満体型が多く、肥満体質だと糖尿病や癌の発症率も高くなると言われおり切断するリスクも高くなる。でも、これを説明しても「へー」と言われるだけ。これは意識の問題か....。

 

 

(3)義肢装具士養成コースに侵入してみた

 っということで、Chirinzaに連れられて

義肢装具士養成コース(Um curso de ortoprotegiaに侵入してきた。

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↑こちらが義肢装具士養成コースの教室。

※女性教員2人の手前のストールを首にかけている女性が Chirinza。

 

 

義肢装具士ポルトガル語で「Ortoprotegia:オルトプロテジーア」と言われる。

義肢はポルトガル語で「Prótese:プロッティジ」。

ちなみに理学療法士は「Fisoterapeuta:フィジオテラぺウタ」で

理学療法学は「Fisoterapia:フィジオテラピーア」である。

ほんとややこしい。

 

ほんで、Chirinzaは義肢装具士養成コースの教員であり主任でもある。

この義肢装具士養成コースはモザンビーク全土で首都のマプトしかない。

さらには大学コースはなく日本でいう2年半年の専門学校コースしかない。

1年次は座学を行い、2年次から病院実習が始まる。

このクラスは2年生になったばかり。なので病院実習がもう少しで始まる予定である。

 

クラス概要はこんな感じ

生徒数 30名

男女比 男:女=8:2 

※ある男子生徒曰く

「うちの女子はマジで怖いっすよ。色目を使って宿題をコピーさせてって言ってくるんです」。

年齢層 18〜40歳

 

 

また始まったChirinzaとの教室でのとある会話

Chirinza:Bom dia os alunos.Como estão?

 (おはよう、生徒達。調子はどう?)

学生達:Bom dia.Professores,estamos bem.

 (おはようございます。先生達。大丈夫です。)

Chirinza:Hoje é uma prova prática.Já prepararam?

 (今日は実技試験だけども、準備はバッチリかな?)

学生達:Sim.Professores.Já preparamos completo.

 (はい、先生。準備は完璧です。)

俺:É verdade?Hoje é a prova prática?Não sabia isso até agora.

 (え、マジっすか?今日実技試験するなんて、今まで知らんかったし。)

 Chirinza:Desculpa.Vamos supervisar com junto a prova prática .

 (ごめんねぇ。一緒に試験監督するわよ)

俺:Mas.... Eu não tenho uma experiência sobre ortoprotegia .Como devo fazer isso?

 (だけど、義肢装具の試験監督の経験ないよ。どうすればいいの?)

 Chirinza:Só sentar aí e visitar-nos.Quando quero me ajudar,chamo-se.

                  Mas em lugar de visitar,pode me esquentar durante a          

                  supervisão.Hahahahaha.

 (そこに座って、私達を見学するだけでいいわよ。手伝って欲しい時に呼ぶから。

  でも見学している代わりに試験監督中は私を温めててよね。wwwww)

 

 

 

 

 

俺:。。。。。。。。。。。。。。É paa!

 (えっっマジ!またかよ。)

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(4)どんな感じで実技試験が行われてるのか?

 実技試験の問題を見せてもらった。

こんな感じ↓

1.切断された部位を特定し、この切断に対してどんな種類の義肢が適応か答えよ。

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※座っている男子生徒が患者役で女子生徒が試験中。

※男子学生の右膝下にある黒いラインのレベルで切断されていると仮定。

 

 2.この切断の症例の問題点と注意点を答えよ。

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 ※女子生徒が試験監督のChirinzaに説明している様子。 真剣。

 

 

3.義肢を実際に装着させた際に、どこの部位に圧の分散をさせるか? f:id:Nannzya:20170903195944j:plain

※座っている学生が患者役。実際に足を触って各部位の名称を答えながらなんでこの場所に圧を分散させないといけないか?など説明している様子。 

 

4.膝下から切断された先端までの長さを計測せよ。

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※ メジャーを使用して長さを計測している様子。

 

試験後に感じたことは学生を評価するための基準が確立さていること。そして、その基準は保健省がブラジルの理学療法士協会の資料を参考にして作成しているとのこと。また、授業用の資料もブラジルの文献を参考にしている。

 

 (5)分かったことと疑問点

今回は義肢装具養成コースを見学してきた。

分かったのは

 

モザンビーク全土で義肢装具士養成コースが1つしかないということ。

・病院実習前に実技試験が行われており、学生評価の基準も統一されていた。

 

 

Chirinzaの無茶ぶりから始まった見学だったが、彼女の誘いから新たな知見・発見があった。感謝している。うん、本当に。

 

 

 

だが、

見学を終えて1つの疑問が残った。

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1年間で30名しか新たな義肢装具士が誕生しないってことは

切断患者数に対して義肢装具士の数がバランスが悪くないか?(切断患者数>義肢装具士の数)

と。

 

 

義肢装具士養成コースは本校しかないためモザンビーク全土で1年間に30名しか誕生しないことになる。

モザンビーク住民の主な交通手段は乗合バスだ。このバスなしでの生活は今後もありえないことだし、肥満体質も急速に改善される見込みは少ない。

つまりは切断患者数が義肢装具士よりも増加傾向であることが分かる。それではなんでモザンビークには1コースしかないのか?もっとコースを増やして義肢装具のスペシャリストを育成すればいいんじゃないか?と思うのが普通である。

 

なぜ? 

結論からいうと

 

 

 

 

「国の予算が不足している」からである。

 

 

 

ここモザンビークでは医療従事者(医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師助産師、管理栄養士、理学療法士作業療法士義肢装具士など)が全体的に不足している。

現段階で医療従事者の育成が急務とされている職種を挙げると.......

 

医師

 

看護師

 

である。

理由としてこの職種の行為が患者様の命に直接関わる可能性が高いからである。

だからといって理学療法士義肢装具士その他の医療従事者が命に関わらないわけではない。理学療法士のケースで考えれば、歩く練習中に患者様を転倒させてしまい患者様の命を落とすというリスクもある。

しかし、医師(手術ができる:癌摘出)と看護師(注射ができる:輸血、点滴による栄養補充)この職種が基本なのである。

 

 

そして、今の国の情勢から保健省からの医療従事者育成のための予算が確保できていないのである。そのため、医師・看護師の育成が優先されてしまっているのが現状である。

 

 

勿論、この現状を生徒達やChirinzaも分かっている。彼らはそんな問題のことは理解しているし、直ぐに解決出来ることも分かっている。しかし、彼らはその限られた資源・環境の中で「今できること」に取り組んでいるのである。

 

(6)考え方の変化

活動当初は口癖で

「日本ではこのような道具がある。日本にはこのような医療システムがあって、だからこれが必要じゃないの?もっと、こうすればいいのに.....」。

と日本の事例と比較しながら説明していた。しかし、今ではその説明は自然となくなっていった。

 

 

「この国の資源・制度の中でどこまで患者を笑顔に出来るか?」

 

という考えにシフトチェンジしたからだ。

今、自分がいるのはモザンビーク。日本ではないのだ。

国によって医療資源・制度は全く異なる。それでも、唯一変わらないのは理学療法を提供する相手は目の前の患者様なのである。この考えは世界中どこにいっても変わらないし、そうであるべきだと思う。

そして、国が違えば共通言語が違ってくるのは当然のこと。

でも言語の壁はあっても「気持ちをぶつけれ続ければ伝わる」のだ。

 

患者様に上手く説明できない、生徒達にも上手に伝わらない。どうしたら伝わるのか。でも根気強く信念持って気持ちをぶつけ続ければ理解しようとしてくれて、教えてくれと言ってくれる学生達や一緒に運動したいと言ってくれる患者様が目の前にいる。その言葉が自分の起爆剤なのかもしれない。

 

 

 

「気持ちをぶつけ続けることで道は開ける。」

 

 

 

 

皆さん、次もお楽しみ。

 Até a proxima.